12月 11, 2025

「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で世界初公開したポータブル振動計「VW-3100」

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」が5月21日~23日の会期で行なわれている。入場料は無料(登録制)。

 展示ホール・184にある小野測器ブースでは、「モビリティ社会を支える計測ソリューション」をブーステーマに設定。次世代モビリティに貢献する最新の計測機器の展示、紹介を行なっているほか、会場で新製品のポータブル振動計「VW-3100」を世界初公開した。

パシフィコ横浜 展示ホール・184にある小野測器ブース

ポータブル振動計「VW-3100」(世界初公開)

ポータブル振動計 VW-3100

 8月の発売を予定するVW-3100は、「加速度」「速度」「変位」という3種類の振動値を同時に計測、表示できる振動計。稼働中の産業機器などに取り付け、機器の回転軸などから発生する振動を計測して数値化。経年劣化などによる不調を振動計測で診断する。価格は50万円~。

 各種業界の製造現場にある回転機器の設備診断に加え、自動車や家電製品向けのモーターやコンプレッサーなどを生産する現場の検査ラインにおける良否判定での利用をターゲットとしている。

 VW-3100では3つの「可変バンドパスフィルター」を使い、異なる周波数帯域の振動を同時に計測できる独自機能「V3バンド」を採用。各バンドで物理量のうち加速度、速度、変位のいずれかを選択して、実効値やピーク値などの演算も同時に行なえる。従来の振動計では物理量ごとに使用できる周波数帯域が固定されていたが、V3バンドの搭載によって異常振動に応じた柔軟な帯域設定が可能になり、異音の抽出や聴音、定量的な検出・評価がより正確になる。

 また、可変バンドパスフィルターを利用して、センサーで取得した振動信号を音に変換する聴音機能も搭載。V3バンドで周波数範囲を任意に変更して絞り込み、より明確に異音を聞き分けることが可能になる。

ディスプレイに計測した振動を数値で表示。画面下にあるコントローラーで周波数帯域などの設定変更が可能独自機能である「V3バンド」の解説

 計測・点検しながらすぐに収録(ORF/WAV)を行なう収録・聴き比べ機能のオプション「VW-0320」にも対応。計測したデータをO-Solutionなどの後解析ツールを使って詳細解析や聴音を行ない、精密診断することも可能。また、収録した3つのデータと現場で計測した振動音を聴き比べることで、異常の有無が判断しやすくなっている。

 このほかにも、VW-3100で計測したデータの管理を支援するPC用振動診断アシストツール「VW-0350」「VW-0360」を用意。計測条件や設備情報をあらかじめ設定して本体に送信することで、現場で機械ごとに条件を設定する手間を省き、効率的な点検を実現。また、本体で取得したデータをPCに取り込み、「傾向管理グラフ」として表示したり、振動音の再生も実施。これにより、数台の機械から設備診断にデータを取り組み、定期的な傾向管理を通じて的確にメンテナンス判断する体制構築をアシストする。

ブースでは異常が出はじめた機械をVW-3100で計測し、「可変バンドパスフィルター」で変換された音の違いをヘッドホンで体験するデモも行なわれた

 開幕初日の5月21日にはブース内でプレゼンテーションを実施。説明員は振動計の利用目的について、人間が体調不良のときに病院に足を運び、医師が聴診器で心拍や呼吸音などを聞く診察ことと同じようなものと表現。

 生産現場では近年でも作業員が聴診棒を使って異音などを聞き取るシーンも多いが、不具合の検出には長年の経験が必要とされ、作業員によって判断が異なる場面も出てくるなど、メンテナンス作業が属人的になる傾向があり、この課題の対策として振動計が利用されているという。

 VW-3100は「機械の声を聞く」をキャッチフレーズに開発され、設備の保守・点検や製品検査の現場で求められる「聴く」「振動を計測する」「判断する」という一連の作業をオールインワンで実現。異常を聞き分けて抽出し、数値化する製品となっている。機械の声を聞くことで現場の技術伝承という課題を解決に導くツールであり、設備の長期使用を実現して、社会の安全・安心に貢献したいと語られた。

VW-3100について説明するプレゼンテーション聴診棒などを使う官能検査では、メンテナンス作業が属人的になる傾向がある

クランプ型トルク計(新製品)

新製品の「クランプ型トルク計」

 4月に発表されたばかりの新製品である「クランプ型トルク計」も製品展示。2分割された円筒形のセンサーと無線接続で送信されるデータを受信・処理する本体で構成されるクランプ型トルク計は、対象となる車両のドライブシャフトにセンサーを挟み込んで固定するだけの簡単な取り付けを実現。

 これまでのドライブシャフト位置で計測するトルク計は、シャフトに加工が必要だったり、検出器の脱着によるデータの再現性がないことも一般的だったが、クランプ型トルク計は付け外しが容易な構造を備えつつ、繰り返し取り付けても高精度で再現性のよいデータ計測が可能となっている。また、付け外しが容易ということで異なる試験車両を同じセンサーで評価しやすく、試験車両を比較、評価する場合にセンサーによる誤差要因を排除できることもメリットとなっている。

 また、回生ブレーキの制御設計や設計検証が必要となるBEV(バッテリ電気自動車)やHEV(ハイブリッドカー)などの電動車では、ディスクブレーキやドラムブレーキといったメカブレーキの影響がないドライブシャフト位置のトルクを計測することで、エネルギーマネジメントの設計・評価が可能になる。

 なお、現時点では発売から間もなく、注文数も少ないため受注生産となっているが、これから発注が増えていけば正規のラインアップ商品にしていきたいとのこと。

アクリルパイプを挟み込んでいるのがトルクセンサー。2個セット、または4個セットで販売される車両のドライブシャフトに取り付けた写真。コンパクトで脱着の作業性がよい点も自慢とのことクランプ型トルク計を開発したきっかけクランプ型トルク計の概要イラスト。センサーとアンテナは無線接続されるGPS速度計「LC-8300A」

 GPS速度計の「LC-8300A」は、GPS/GLONASSからの衛星信号に加えてIMU(慣性計測ユニット)を利用して補正を行ない、街路樹や高層ビルなどの影響で電波障害が起きやすい市街地でも、試験環境に左右されることなく安定した速度計測を実現。GPSアンテナや独自のIMU補正アルゴリズムをさらに進化させて計測の安定性を高めている。

 試験の計測データを本体の内蔵ストレージやUSBメモリーにCSV形式で保存し、試験後にPCにデータを移行して閲覧、グラフ化などを行なえる「本体試験モード」も備える。

高機能騒音計「LA-7000」シリーズ

「LA-7000」シリーズは4.3インチの大型カラータッチパネル液晶を採用して分かりやすい操作性を実現し、直感的な操作で計測を行なえる騒音計。騒音レベルの測定や演算を行なうこと以外にも、ヘッドホンを接続してマイクが拾っている音を聞きながら計測する「リスニング機能」も搭載。これによって気になる音の発生場所を正確に特定したり、確実に録音できているか確認しながら計測できる。

 このほか、防風スクリーンを使用して測定する場合に装着の影響を補正する「防風スクリーン補正機能」、液晶画面の表示内容を保存して画像として出力できる「キャプチャー機能」、音響校正に使用する推奨校正器の情報を登録したり、校正モードの完了時に校正データを内蔵メモリーに自動保存する「校正履歴機能」なども備えている。