横浜FCが挑むスポーツDX–選手育成とチーム強化に最先端技術を活用 – ZDNet Japan

横浜FCが挑むスポーツDX–選手育成とチーム強化に最先端技術を活用 – ZDNet Japan

 横浜フリエスポーツクラブ(横浜FC)は2021年2月26日、マクニカとオフィシャルテクノロジーパートナー契約を締結した。ホームスタジアムにIEI Integrationの体表温度検知機器を導入し、コロナ禍におけるスムーズな運営を実現している。同社の代表取締役社長で最高執行責任者(COO)の上尾和大氏は、マクニカが11月16~19日にかけて開催したオンラインイベント「Macnica Exponential Technology 2021」(MET2021)の講演で、「サッカークラブにおける、全てのものを数値化して改善していく」と、マクニカの伴走に期待する旨を述べた。

(左から)マクニカ Co.Tomorrowingプロジェクトの中出理貴氏、横浜FC 代表取締役社長 COO の上尾和大氏、マクニカ 常務取締役の佐藤剛正氏

 現在、横浜FCはJ1リーグ(J1)への定着を目指しつつ、2025年までのAFCチャンピオンズリーグ出場を目標に掲げている。上尾氏は「横浜市民の皆さん、サポーターの皆さんと一緒に喜びを分かち合いたい。そのためには(全てを含めた)環境が重要」と語りつつ、施設全般やスタッフ陣の管理体制を構築してきた。

 2020年は空前のコロナ禍にあり、横浜FCも無観客試合や観客の入場制限を強いられつつ、チームのJ1定着をかけてシーズンを戦ってきた。同社を経済面で見ると「2020年は21億円規模。5年かけて約1.5倍(の33億円規模)を目指す。そのためには事業性(=ファン獲得)と競技性(=勝利)、社会性(=ホームタウン活動など)の3つが重要」(上尾氏)という。

 同社が重視するのが「数値化」だ。上尾氏は「選手の一挙手一投足を数値化できる時代。健康状態による怪我の予防や練習効率の向上、映像分析による練習状況や相手チームの分析、若手を育成する制度も詳細に数値化したい」と語る。


マクニカによるスポーツテックの対応状況

 ウェアラブル端末を使った体組成の測定が一般化しているように、スポーツテックの分野でもデジタルの利用範囲は広い。マクニカ 常務取締役の佐藤剛正氏は「スタジアムで顔認証が可能になれば、来場者の性別や年齢層などを分析し、天候や対戦チームに応じた構成を把握できる。内容に応じて特定の年齢層に向けたコンテンツ配信など、サポーターに提供できるサービスは多彩」だと語る。

 日本プロサッカーリーグも「Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」を策定し、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と円滑な試合運営に取り組んでいるが、議定の1つに入場前の体温測定がある。だが、来場者全員に電子体温計を配ることは非現実的だ。横浜FCがマクニカに相談を持ちかけた結果、ゲートを通過するだけで体表温度を測定するIEI Integrationの「体表温度検知ソリューション」の導入に至った。

 サーモカメラ(赤外線サーモグラフィーカメラ)が人間の顔を認識すると、同時に30人までの体表温度を測定し、ディスプレイに映し出された情報で37.5度以上の来場者がいないか確認できる。上尾氏は「入場時間は従来の3分の1。デジタルを通じてスタジアムの環境が改善した1つの事例」だと評価した。

ニッパツ三ツ沢球技場(横浜FCのホームスタジアム)に導入されたIEI Integrationの体表温度検知ソリューション
ニッパツ三ツ沢球技場(横浜FCのホームスタジアム)に導入されたIEI Integrationの体表温度検知ソリューション

 マクニカは2019年に人工知能(AI)を専門とした組織「AI Research & Innovation Hub」(ARIH)を設立した。佐藤氏は横浜FCとの協業について「例えば、選手の動きを分析して数値化/データ化し、練習の質や選手の志を高められる」と主張した。

 この発言に対して、上尾氏も「中2日、3日で試合が進むと、十分な分析もできずに試合に取り組まなければならない。海外クラブと比べてもJリーグクラブは少人数の分析スタッフで運営するチームもある。90分の試合を全て視聴せずともAIが分析すれば、Jリーグ(に所属する)チームにとってプラスに働く。間違いなく手助けの1つになる」とマクニカの伴走に期待するとのコメントを寄せた。

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